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栽培技術 連作について

 

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「現代農業」2019年10月号
「連作は究極の栽培技術だ!」

「やさい畑」2020年春夏準備号
「正体を知り、障害に打ち克つ  めざせ! 連作の達人」

で、内田達也が監修する連作に関する記事が掲載されました。
このブログでもあらためて「連作について」お伝えします。
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ほとんどの農業の本には、

連作を避けましょう。連作をすると連作障害がおきて、作物の出来が悪くなります。

と書いてあります。

また、慣行や有機などに関わらず、なるだけ連作をさけて輪作を実践されている農家さんが多いのではないかと思います。

でも、実際は特定の作物を連作せざるを得ない農家さんがほとんどなので、農薬や土壌消毒などによる防除、病害がひどい場合は、土を入れ替える「客土」をして、まっさらな状態にして農業生産を続けているケースもあります。

 

実際に連作障害というのは、多かれ少なかれ起こっていますし、起こります。

特に、激発するのが、連作して3~5年目くらいの時期。病害が発生したり、虫害にあうようなことが起こってきます。それにより収量の著しい低下が起こってきます。

かくいう私もそうでした。なるだけ、相性のよい作物を組み合わせて輪作で病害虫を回避して、作型を安定させていくことに取り組んできました。

そんな折、当時MOAの自然農法大学校の校長を務めていた木嶋利男先生にお会いし、連作の研究にふれて、自分自身でも様々な作物で試作実践し、「連作こそ、究極の農業技術」だと思うに至りました。

実践の結果として、最終的に、発病衰退期(注1)を経て、発病抑止土壌(注2)が示すような状態に近づいていくこと、また、作物によってやりやすい、やりにくいものがあることも認識できました。

ここでは、木嶋先生や自然農法国際研修開発センター時代からの先生である石綿さんに教わったこと、そして、私の思考錯誤の経験などを踏まえて、連作の概要・メリット・デメリット、連作をする上でのネックである連作障害の回避、克服の仕方、発病抑止土壌に近づけていく移行技術、具体的な作物の栽培方法なども含めて紹介してきたいと思います。

実践をする上で参考にさせていただいた本としては、「連作のすすめ」木嶋利男先生

及び、私が所属する「農の会の会報誌での連作についての記事になります。また、この記事を書くにあたってもそちらを参考にさせてもらってます。より詳しく知りたい方は、是非、一読をお勧めします。

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 【注】

※「連作のすすめ」より抜粋-

注1)発病衰退現象

発病衰退現象とは連作を続けると、はじめ激しかった病気の発生が激減し、収量が増加する現象です。1974年クックやホンビーらによって、コムギ立枯病の発病衰退現象が、病原菌に対抗する微生物によって生じることが科学的に解明されました。その後、ダイコン立枯病、テンサイ根腐病 、ジャガイモそうか病、ワタ根腐病などでメカニズムが科学的に解明されています。また、科学的には、未解明ですが、イチゴ、トマト、ナス、ジャガイモ、スイカ、メロン、キュウリ、ユウガオ、タマネギ、ニンジンなどの多くの野菜類は、伝承的に連作で栽培されています。

注2)発病抑止土壌

発病抑止土壌とは連作にもかかわらず、土壌伝染病が問題にならない土壌(地域)のことです。三浦半島のダイコン栽培地帯は発病抑止土壌として世界的に有名です。発病抑止土壌には、①病原菌が定着できないため発病しない土壌、②病原菌は定着するが発病しない土壌、③病原菌が定着して激しく発病するが、連作に伴い発病が激減する土壌に区分されます。一度発病抑止土壌になると、病原菌を摂取しても土壌病害は発生しません。また、土壌を消毒すると発病抑止性は消失しますが、1~2年で再び発病抑止の土壌に復活します。

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■連作とは

ここでの連作とは、少なくとも一年に一回以上、同じ作物を栽培することを言います。

ちなみに、輪作とは、前作育てた作物と別の作物、とくに、相性のよいものや、病害虫がかさならないようなものを意図的に組み合わせていくことを輪作といいます。

例えば、同じ圃場に秋のニンジンを毎年固定で育て、そのあと、トウモロコシ、えんばく、キャベツなどを交互に切り替えた場合。ニンジンは連作、とうもろこしなどは、毎年かわるので輪作になります。

連作が良くて、輪作が悪いというわけではありません。最終的に連作を可能にするために、上手に輪作を利用していくことが大事だと思います。

 

■連作をかける時のコツ

「連作」が良いということは、科学的にも証明されていることなのだとしたら、

実践する農家さんが実践する際に、一番のネックになるのは、3年~5年の間に起ってくる、連作障害による病害虫の発生、収量低下、秀品率低下につきます。

ここをクリアーにできない限り、連作を採用できないと考えるのは、当然だと思います。

その後、連作を続けていくと発病衰退期を経て、発病抑止土壌が示す状態に近づいていくまでの期間、

連作障害を極力マイルドに抑える、もしくは、発生が気にならない程度に抑えつつ、経営を続けていき、発病抑止土壌に近づいていければ、結果的に、「あーだこーだ」作付の変更もしなくていいので楽。病気の発生がなくなるので、楽。

農薬などのコストもカットできるので嬉しい。そんなことが起こせると思います。

連作をより抵抗なく、安心して実践できるように、

自分自身の取り組んできた事例と仲間の連作の実践例などを紹介していきます。

使えるものがあれば、移行期間に使ってみてください。

また、木嶋先生の本「連作のすすめ」には、特に効果のある移行期の対策技術がのってますので、参考にされるといいと思います。ここでも簡単にまとめて紹介します。

 

■連作実践例紹介(内田)

私の場合は、管理していた圃場面積が大きかったこと、地域的に離農者が多く遊休農地が毎年出てきたこともあり、遊休農地の有効活用も含め、緑肥を使った連作体系を組みました。種をまくとき以外は、できるだけトラクターで管理できるような機械化体系にして省力化を図りました。

基本、緑肥の項目に準じます。緑肥をうまく組み合わせることにより、簡単に連作が可能になった印象があります。

 

■秋冬ニンジン 

ニンジンは比較的連作がしやすいですが、キタネグサレセンチュウの害が心配です。

そこで、3月にニンジンの一斉収穫後、えん麦(ヘイオーツ)を作付。すきこんだ後は、太陽熱処理をかけて、播種をするという体系を組みました。また、自家採種できる品種を毎年、採種して使うこともしていました。もちろん一般品種もつかいました。

また、連作開始2年目からは、緑肥だけの無肥料栽培に切り替えました。

7年の連作の結果。年々、秀品率の向上。品質の向上が見られました。連作障害らしい連作障害はほとんど発生しませんでした。自家採種したほうがより秀品率は上がりましたが、一般品種のできも良くなっていきました。

また、太陽熱処理をしているため、除草の労力がゼロだったので、間引きだけ入ればよかったので、省力化につながりました。

ちなみに、初期は土壌診断をして、土の化学性を確認し、ニンジンを継続的に栽培するのに値する土壌なのかの把握をしました。

黒ボク土のため、基本的に水はけはよかったのですが、初期は、緑肥を作る前にサブソイラーをかけ、緑肥の根が効率的に耕盤層より下層にいけるように導きました。

また、初期は、緑肥すきこみ時に、発酵促進材をかねてぼかしや、米ぬかを使いましたが、その後は、緑肥とにんじんの播種した後に撒きすじにそってまく少量のもみ殻以外の圃場外からの投入はなくしましたが、土壌診断の結果としても養分が特異的にへるわけでもなく、ほとんど変わらない状態で無肥料で栽培が可能になりました。

 

■大根(秋・冬作)

ニンジンと同じくヘイオーツを使ったり、12月すぎの収穫は、ライムギをつかいました。最近だと、キタネグサレセンチュウの害をふせぐライムギのR-007がでているので有効な品種などを選択して使うのもいいのではないかと思います。

年々、病害虫の発生が減っていきました。台風などの被害にあっても、連作圃場は回復が早く、弱った状態でも、病気にやられることなく健全に育つケースがほとんどでした。

連作5年目には、マルチなしにも関わらず、播種後の草取りもいらない状態になりました。大根を播種後、間引きに入るだけで、後は収穫まで何もせずに行ける。

超省力化で簡単にできるようになりました。

ちなみに、ここでは、自家採種も行いました。対象区として、一般品種の区も作りましたが自家採種のものの生育がよくなるのは、もちろん、ダイコンであれば、どの品種も秀品率があがる状態になっていました。

 

■トマト(夏・秋どりハウス)

 

●定植時 

①微生物の活性化  前日などのEMや濃い木酢液を定植穴に潅水。土壌微生物の状態を整えておくことしました。

②ニラの混植 萎凋病と根腐れ萎凋病に効果のあるとされるニラを混植

 

●栽培中

①被覆資材(落ち葉、敷き藁)

定植後は、株周りには、森の落ち葉をマルチします。トビムシ、ササラダニなどの小動物がふえるのと、徘徊性のダニなどが増えるので、ダニの害が減るもしくは、出ない。また、しばらく生育をしたあとに、麦わらのマルチを全面にしました。これは、作付後の有機物の補給と微生物の活性化。枯草菌などを増やすことにより、梅雨時期の疫病菌の予防をねらって使いました。

①微生物資材・天敵導入

・オンシツコナジラミの発生時期に合わせて、微生物農薬をまく。

・温室コナジラミ天敵である寄生蜂なども導入。

・梅雨時期に入る前にEMセラミックスを混ぜた、EMと納豆菌を混ぜた溶液を葉面撒布。

 葉を乾きやすい状態にしておくのと、セラミックスを圃場全体にまくことにより、疫病菌の遊走子を吸着させ動き鈍らせるように環境を作っておく。

②葉面散布

・作物の状態に合わせて、微生物資材などを混ぜた溶液を葉面散布し、健全な生育を促進。

 

●作付終了後

①太陽熱処理 9月くらいに作付を終了する場合は、ハウスを締め切り太陽熱マルチを導入

②緑肥の導入 太陽熱処理後のヘイオーツの作付。ヘイオーツ終了後は、定植予定の畝にアブラナ科の葉物などを作って土の団粒化を進めておく。トマトを定植するときには、定植する位置だけは先に収穫しておきます。左右に小松菜などがあるので、初期生育があばれずにスムーズに育つ。小松菜などのアブラナ科がつくった根圏を引き継げるので、スムーズにトマトが土壌環境を整えられるのではないかとおもって取り組んでみた。(連続栽培)

※ポイント

細かくは、状況に合わせて様々な対策をしているが、とにかく環境が安定するまでは、極力やれることはすべてやりました。

環境と作物の側の反応が安定してくると、どんどんシンプルにやることを減らせるようになります。

果菜類は収益があがる作物なので、連作が機能してくるまでの数年間は、しっかりと対処技術を使っていったほうが安全だと思います。

※慣行からの移行であれば、減農薬にしていくとか、微生物農薬を併用するとか、オーガニックに移行する間、土づくりを進めつつ、移行させていくのが経営的におすすめします。

 

■仲間の事例 トマト

トマトの通路部分に当たるところにトレンチャーで80㎝~100㎝の深さの溝を切り荒めの選定枝チップを充填。定植後は、畝の周りのもチップをしいて前面チップマルチ。

毎年、通路部分が分解するため、チップの高さが落ちてくるので、その分のチップを追加している。

水はけが劇的に改善した。ハウスの中の二酸化炭素濃度が通常の二酸化炭素濃度の10倍以上の濃度になったようです。葉が厚く病気にかかりづらい。無肥料の栽培であるが、トマトが通路部分に充填された炭素資材の養分供給で十分な栄養を摂れている。

また、一年目は、まだ充填した炭素資材が微生物や小動物により有効化されていないので、養分供給が十分ではない。農家はトマトの生育をみながら適宜、液肥などの施用も考えていくと、収量を確保しつつ、移行していくことができるのではないかと思う。

また、炭素資材のマルチの上に、米ぬか主体のぼかし、米ぬかをまくと、トビムシなどの小動物や微生物などが大量に発生することから、初期の土壌生態系づくりに役立つのではないかと思っている。作物に直接肥料としてあげるというより、土壌の生態系を活性化して養分化をすすめる起爆剤としてのチッソ系資材を投入するというコンセプトで使うとよいのではないか。

 

■ニンニク

ニンニクとソルゴーの組み合わせ

6月にニンニク終了後に、ソルゴーを作付。すきこみをして、9月中旬~10月中旬の間に黒マルチをはって定植。その繰り返し。

火山灰土でニンニクを作る際は、土壌診断をリン酸の数値が低ければ補うなど、化学性が整っていることを確認。必要に応じて、PH調整やリン酸の追加を行っておくと鱗形ものの栽培が容易になる。

連作初期は、ソルゴーがしっかりと育つように、米ぬかや鶏糞などリン酸分を含んだ有機物を施用して、ソルゴーに吸わせてからすきこみ、ニンニクに使ってもらうという方向でいくと比較的作りやすい

後は、自家採種を組み合わせていくと年々作型が良くなっていく。


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