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土・作物・栽培(人)の連動が大事①

 今日は、育土(耕地生態系をはぐくむ)・作物・栽培(人)の連動が大事なのではないか?というお話。

 

 

※注(言葉の説明)

 耕地とは畑や田んぼなど作物生産に利用される土地のこと。

土ではなく、耕地生態系と表現したいのは、土はたんなる物質ではなくて、無機的要素(気象要素・水・鉱物など)と生物的要素(微生物・小動物・大型の動物・作物・雑草)などが複雑に絡み合い相互作用をしているシステムであると表現したかったので。

 

以前、緑肥のえん麦を使いながら、無施肥で秋冬作のニンジンの連作を6~7年作っていた畑を管理していた時のことです。

自家採種も行いその土地に合った品種にすることも行っていたのと、市販の優良品種も使っていました。自家採種のほうは、年々秀品率や食味が向上。安定生産が可能になっていました。また、他の品種であっても、にんじんであればどのような品種を使っても良くできるような状態になっていました。

そこに、見学会で、たんじゅん農法を実践されている方が来られて、

 

「やはり、土がよくなったからこういう結果がおこるんですね?」と質問・確認してくれました。

 

僕は、その方の畑の状態や、栽培技術なども見学してわかっていたので、参考になればいいなーと思って。

 

「土はもちろんのこと、ニンジンをいきいき育てるための適切な栽培管理(間引きのタイミング・除草のタイミング・・・)。より作物をこの栽培環境に合わせるための自家採種をしたのでできたのだと思います」と答えました。

 

その農家さんは、

「土ができれば、なにもせずとも作物は育つんだー」

「ほら、これをやれば、こんなになっちゃうんですよー」

と言ってもらいたかったようなので、すこし納得がいかない顔をしていました。

 

この方が特別なわけではなく、有機農業や自然農法、自然栽培、自然農、はたまた、たんじゅん農法でもこう考えているような方はおおいのではないかと思います。

また、特定の資材に頼っている方とかもそういう傾向が多い気がします。

かくいう僕もそういう時期がありました。これを使えば大丈夫と信じたい。もしくは、売る側もそう強い宣伝で売る方もいますので、それを盲目的に信じてしまう。なにも特別なことではなく、日常的な生活の場面でもそういうことは良くあるのではないかと思います。

 

なにか「土」信仰といういうか。 土さえ良ければすべてが可能になるというような。 単純化しすぎる傾向を持った方がいる気がします。

それは、「資材」「農法」信仰にもつながります。

 

確かに、よい土では、無駄な対処技術などいらなくなることも多く、どんどん栽培は楽になっていきます。それは、実感としてもそう思います。

 

土はもちろん大切です。さらに、そこにかかわる作物、そして、土と作物をつなげていくための人の関わりあいとしての栽培の3つの視点で見ていくと、

 

多面的・多角的により細やかな理解につながりやすいし、現場で生かせる技術の組み立てができるのではないかと思っているので、

 

少しお話をしてみたいと思います。

 

■人間世界に例えると?

いい例えになるかわからないですが、あえて、人間の世界に例えると

例えば、学校と子供と親の関係に極端にたとえてみます。

(学校が畑の土 子供が作物 親が栽培(者)のようなイメージで読んでください)

 

例1 ものすごい優れた学校があるとします。教師陣もよく、生徒も優秀で、学習設備も最高に整っている。ここに子供を預けたからといって、その子が素敵に育つかどうかはわかりません。例えば、家庭がものすごく荒れていて、両親そろって、子供に猛烈なダメ出しして、子供のやる気や能力を徹底的にそぐような育て方をしたとしたら?

どんなに学校という環境が良くても、子供が憂いなく、生き生きと過ごせない感じがしませんか?

 

例2 学校という環境が、超一流の難関大学に合格するために最高の環境だったとします。親も熱心な教育ママ・パパで。学校も親もばっちり。

でも子供は、歌や踊りをするアーティストになりたいとします。そもそも、子供の求めているものと、環境が違います。何かが食い違うような気がしませんか?

 

例3 親も子供もとっても意思疎通が取れていて素敵。

でも通う学校が猛烈な校内暴力全盛期のような学校で、授業もままならないような環境だったとしたら?

まあ、極端な例を挙げてみましたが、学校・子・親のような関係においても3つがうまく連動していると、相乗効果が期待できるような気がします。

 

さらに、極端な例ですが、

日本の公立の学校に、あたらしく、アフリカのマサイ族からの転校生を受け入れたとします。初めての経験なので、教師をはじめとする受け入れる側も、前例や経験がないので、慣れるまで時間がかかることでしょう。もちろん、マサイの生徒も初めての環境でとても落ち着かない日々をすごすことになるかもしれません。

しかし、これが、毎年、毎年、転校生を受け入れることになったとしたらどうでしょうか?

年々、学校側の経験値も上がり、また、生徒も年々、環境になれてくる。

生徒と教師が継続して関わりあうことで、生きた知恵が集積して、よりお互いにとって過ごしやすい環境が形成されていくことと思います。

 

■農耕のケースでは?

これと似たようなケースが、農耕の歴史の中で頻繁に起こってきました。日本原産の野菜は、ウドとか山菜くらいなもので、

今ある野菜は、ほとんど海外から入ったものです。

 

例えば、今では、日本の夏に欠かせないスイカ。

スイカ原産地

もともとは、アフリカの砂漠で自然に生えていたものでした。

ちょとスイカの立場になって想像してみてください。

故郷は、赤道直下。高温で乾燥の砂漠地帯の雨の少ないところにもともと生えていたスイカ君が突如、光が弱く、湿気があって梅雨時期になるとべとべとする日本に来たとしたら。ものすごく環境が代わってすごしにくいと思いませんか? 

 

そして、トマト。

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こちらも雨が少なく乾燥し岩だらけの高地、アンデス山脈が原産地。そして、メキシコで栽培植物として使われ始めました。

そんなトマトが、温暖で湿潤な日本の気候にきたら、やはり、「びっくりぽん」なわけです。

「えっ!!えらい環境のちがうところにきてしもうたー」。水が多すぎて、体がだぶつく、

病気にかかりやすい。いったいどう暮らしていけばいいの?となってしまうのではないでしょうか?

 

 

そんな時に、

 

3つの連動を考えてみる

 

①育土の視点として 作物がより育ちやすくなるような土壌生態系づくりを考える

 

例えば、連作することで、その作物がよりスムーズに育つような生態系が形成されるようなアプローチをとるとか。

②作物の視点として  作物の側を環境に合わせていく

例えば、育種。日本に合う気候の品種を作り出すとか、または、会う品種を使うとか。

 

③栽培の視点として

 

:環境(土・気象条件など)と作物がスムーズに連動をできるか考える

例えば、雨が当たらないように、ビニールハウスで作ったり、雨よけのトンネルをかけるとか。生育適温が確保できる季節に作る。地域で作るとか。

 

 

■3つの視点の連動事例としてのニンジン栽培

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原産地は、アフガニスタン

 

この3つの視点の連動という観点から、どんなことを考えて、ニンジン栽培をおこなっているかという事例を述べていきます。一瞬複雑に見えますが、なんのことは、ないです。普通に農家が経験則でやっていることをしっかりと組み合わせてます。

 

①育土の視点として

水はけ・水持ちのよい土を確保するために、緑肥(えん麦を作付前に利用)。毎年、同じ作型を繰り返すことにより、毎年、その場、その時期にえん麦やニンジンの残さがすき込まれ、それを分解する微生物や小動物などが定着してくる。その作物をつくれば、すぐに必要な生態系がつくられるように環境が作られる。

連作を繰りかえすことにより、「にんじんによる、にんじんのための圃場に近づいていく」

と予想して行動してみる

実際に、毎年、秀品率があがり、最終的には、生育スピードまで上がってきました。

それだけ、ニンジンを育てる土壌生態系が整ってきたといえると思います。

 

②作物の視点として

・もともと、冷涼な気候を好むので、秋冬播きか春作を選択

・ 土壌酸度はpH6.0~6.6が好適 化学性があうかどうかを把握する

・根菜類なので、根が順調にのびるために、水はけ・水持ちよく、通気性がよい団粒化した土になるよういアプローチ。

・発芽がそろわないと草に負けるので、発芽を一斉にさせるための工夫をする。

好光性なので、浅く播種する。干ばつにあいやすいときは水をうつ。

・栽培にもつながるが、もともとニンジンはせり科。種を多く落とし集団で、居場所を確保し協力しながら育つ作物。特に、やせた土地や草の多い畑では、種を厚まきして、間引きながら栽培すると良品がとれる。(土に応じてかえる)

・無肥料・緑肥栽培下に合うように、自家採種を繰り返す。また、その品種だけにあう土 を作りたいわけではないので、様々な品種を作付してつくる。

 

③栽培(栽培者)の視点として

・ニンジンは初期の雑草との競合に負ける可能性があるので、太陽熱マルチで除草を済ませておく。

・栽培者としてもできる限り、楽をしたい。とくに除草に関しては、一切、行いたくない。ニンジンは初期の雑草との競合させないという視点からも良い。また、高炭素の資材をすきこんでいるため、より微生物を活性化をして土壌の団粒化をすすめたいという狙いから、太陽熱処理を採用する

・毎年、圃場を動かさなくていいので、考えるのが楽。

・毎年、管理が楽になる。勝手に生態系が出来上がるので、的確な時期に的確な管理をするだけでいい。また、天候不順による病気の発生などにも強くなるので、対処療法をしなくてすむ。

・毎年、草が減っていくので、除草の手間がなくなる。

 

■最後に

3つの連動をお勧めするのは、一つのアプローチや視点にこだわって、もっと他にできることをわすれないでほしいのです。

そして、もっと周りにある力をいかせると思ったので。

作物さんにもっと活躍してもらったりすれば、もっと楽ができます。

実際の圃場でおきているのは、いつでも連動的です。3つが分かれているわけではありません。

すこし分けて考えると整理がつきやすいため便宜的に分けてみました。

みえる化すると、さわれる化しやすい。見える化することで、アプローチがしやすくなるなるのではないか?ということです。

 

あと、よく連作をお勧めしているのは、作物自身による育土を進めたいからです。

作物がそこに育つということは、否が応でもそこでサバイバルするために、根を伸ばし、環境と共生し、自分の周りに自分と相性のよい微生物さん達を住まわせというように、

自分を頂点とした生態系をそこに形成していきます。作物さんにお任せしていくと楽々でそういった状態が作られていきます。

また、さらに人間ができるのは、作物さんがよりご機嫌よく自分たちの住みやすく生きやすい環境を作るためのお手伝いを積極的に進めていくこともできます。

連作障害を起きにくくするために、炭素資材を積極的に投入し土壌中の微生物の活性化をマックスに上げておくことなども人間のできる取り組みの一つだと思います。

 

ちなみに、あくまで仮説。参考までに・・・・


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