iCas

iCas

緑肥を利用した栽培③ー緑肥を利用するメリット

緑肥を利用した栽培③

 

【緑肥利用の実際】

 

■なんで緑肥を利用するのか?

 

① 「緑肥はとにかく楽!!」

 

基本、堆肥や資材をまくのも労力がかかります。

資材を撒布するのも、小規模なら人力、大規模ならマニュアスプレッダーなどの機械が必要になります。その手間も馬鹿になりません。

緑肥は、その点、種をまいて育て、粉砕の際は、手押しのモアやトラクタをもっているならフレールモアをかけた後に、ロータリーですきこむなど機械で管理できる点も楽ちんです。

その上、先にあげたように、土壌改良効果や土壌の病害虫を抑制する効果など複数の効果もあり、利用しない手はありません。

また、年々、緑肥をつかった作型を繰り返すことで、その場の土壌動物や微生物も緑肥や作物残さを利用するのが上手になり、養分化のスピードも上がっていきます。数年続けていくと、炭素率の高いものはゆっくりと時間をかけて養分を放出していきますので、分解しやすいものしにくいものと重層的な養分循環、供給が生まれてきます。

つねに、作物が育つための養分が、時間の経過とともに重層的に供給されてくる状態が作り出されていきます。また、菌根菌やエンドファイトなどの微生物も緑肥により増え、その作物がより育ちやすいように養分循環のレベルが上がっていきます。

 

 

② 「遊休農地や耕作放棄地の増加」

 

私が農業をやっていた地域でも、高齢化と跡継ぎがいないために農地を管理できなくなる農家が年々増えてきました。農業が盛んな産地を除いて全国的に、使われない農地が増える傾向にあります。そうした中、遊休農地を積極的に利用するという意味でも緑肥栽培は有効です。

今までの日本の農業は、狭い農地の有効活用という意味で、一つの畑で何作も栽培したり、輪作などの体系を組むことにより、小規模の農地の有効活用を図ってきました。

しかし、年一回、緑肥をしっかり入れた連作体系を組むことで、堆肥をまいたりする労力を削減し、緑肥によるバランスの良い土壌生態系を整え、土壌病害虫の抑制、農薬を必要としない農産物の生産を可能にすることができます。

このような時代だからこそ、逆に遊休農地を借り入れて、緑肥を使いながらの機械化、省力化栽培を提案したいと思います。

 

 0114562_P03_くれない

 

■緑肥をつかった栽培のコツ

 

まずは、緑肥が育たなれば意味がないので、事前の状態を整えること。(先にあげた通り)

初年度やたんじゅんに切り替えて年数が浅い場合は、緑肥の生育や緑肥を分解する微生物のサポートのために、様子をみて、米ぬかなどの有機質のものを一緒に使用すると比較的初期の落ち込みを減らせると思います。

また、炭素率の関係で、炭素率が低いものを利用すれば、微生物などの働きで作物に養分が供給されてくるまでの時間が短いが、逆に長期的な養分供給はできない。

特に果菜類に関しては、安定的に一定の養分循環がまわるような工夫が必要です。

例えば、トレンチャーなどで溝を掘り、事前に高炭素の資材を仕込んでおくのも一例です。溝の部分が微生物や小動物に分解されて、早くて半年くらいから安定的な養分供給源として機能します。いわゆる溝施肥の炭素資材バージョンだ思ってもらってもよいです。

また、そこまで大規模に土を動かさなくても、緑肥だけでなく、炭素率の低い資材から高めの資材まで、中間的に使える資材などの組み合わせにより、畑全体の養分循環量を上げ、作物が利用しやすい環境を整えてあげることもできます。

 

【緑肥を栽培する前の準備段階】

■排水性や透水性が悪い場合。

 

①暗渠・明渠をつくり水はけを良くする

②トレンチャーで50㎝~100㎝の溝をほって、選定枝チップなどの木材などをつめる。

 

 

■耕盤層がある場合

 

サブソイラーを入れてから、緑肥を作付するとサブソイラーが砕いた溝の下に根が入り込み、排水性を改善してくれます。

 

 SH3I0229

 

■水田からの転換

 

鍬床層をサブソイラーなどで砕きます。その際、なるだけ、細かくサブソイラーをいれます。縦、横、細かく溝をつけていきます。

その後、緑肥を作付するとサブソイラーが砕いた溝に根を伸ばししっかりと根の道をつくり排水性の改善につながっていきます。

 

 

【緑肥の利用のしかた】

 

■具体的な利用の例

 

①他の炭素資材との組み合わせ

 

緑肥だけでは養分供給量が追い付かない作物や作型には、炭素率の高いチップやもみ殻などそ合わせて使います。

緑肥を育てる前に、高炭素の資材をまいて、堆肥やぼかしなどでチッソ飢餓にならない状態をつくるのと、緑肥の生育に最低限必要な養分を補っておきます。

土壌生態系が活性化し、養分循環量があがってくると、炭素資材をすきこんでもその養分化の速さが早くなるので、より使いやすくなってきます。

また、例えば、竹パウダーなど比較的微生物が取り付きやすく、すぐ植物につかえるような養分を供給する資材もあります。その場の土壌生態系の養分循環の状態と作物の状態に合わせて適切な資材の選択や使用をしていくとよいと思います。

 

 

②養分循環をあげるための太陽熱マルチの活用

 

特に、高炭素の資材や緑肥を使う場合、まだ、その場の土壌生態系が炭素資材になれていないし、それを分解するための小動物や微生物の土壌生態系の状態が十分でない場合は、透明ビニールマルチによる太陽熱処理をしていきます。

 

温度がかかることにより、微生物の活性度があがり、養分循環が高まっていきます。強制的に温度をかけることにより、自然の循環を速めてあげるような働きをします。

 

②緑肥循環でつくる

 

根菜類や葉物などは、比較的緑肥の循環だけでも作れてしまいます。

初期は、まだ、緑肥からの養分循環が回っていないので、何かその養分を補うための、たい肥やボカシ、米ぬかなど窒素を補える資材を使っていくと収量も確保しつつ栽培できると思います。緑肥と廃菌床を合わせるとか、複合的な資材を使っていくと養分化の早いもの時間がかかるものなど、重層的に養分供給されていく状態がつくられます。

炭素率を上げてすきこめばそれだけ、養分循環が起こってくるのに時間がかかります。短期的には、チッソ飢餓などの状態も起こってきます。それを回避し、できるだけ初年度でも良品をとっていきたい場合は、米ぬかやぼかしなどの微生物の初期の起爆剤になり、養分化の促進に役立つものを補ってもよいでしょう。

 

③作物の緑肥利用

 

緑肥の代わりにイネ科の作物を利用してみる

初期の土壌生態系が未熟な時は、粗大有機物を生産できるソルゴーなどの緑肥を使います。

ある程度の循環量が確保できたら、今度は、イネ科の作物、例えば、トウモロコシと白菜、トウモロコシとキャベツなどの組み合わせで、作付を回していくのもありです。

例:大豆と麦の輪作など

伝統的な作付として大豆、麦の輪作がある。何サイクルかして土壌の生態系が育って来たら、今度は、野菜栽培に利用していく。伝統的な栽培のしかたもあります。


“be organic.”な世界、
共に創りましょう。

未来の地球と
子どもたちのために。

お問い合わせ