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ケーススタディ・いかす出縄圃場「はたけまるごと菌床化」

 

いかす出縄圃場は、2017年5月、耕作放棄地を開墾するところからスタートし、
1年目の2018年1年目に収穫できた玉ねぎの10a(1000㎡、約303坪)あたりの収量は4トン、
連作した2年目に収穫できた玉ねぎは6トンにもなりました!
(※ちなみに日本の平均は4トン、北海道の平均は5トンです)。

また、いかす圃場で収穫したキャベツと他の有機野菜と比較してみると、

・糖度…約1.7倍
・硝酸イオン…約2割
・抗酸化力…2.7倍
・ビタミンC含有量…2.3倍

という結果も出ています。(オーガニック・エコフェスタ2019より)

 

これまでに実施した土づくり・育土について説明します。

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基本的な流れ
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①土壌診断(化学性・物理性・生物性) 

②開墾・残渣を細かくして分解しやすい炭素源にする

③炭素資材の追加(剪定枝の細かいチップ) 

④炭素率の低い有機物の投入(サンシンの堆肥にする前の原材料を混合したもの。発酵途中の未熟堆肥 放線菌主体:以下サンシン堆肥と呼ぶ) 

⑤土壌表面で発酵処理(10㎝以下の耕起) 

⑥土壌まるごと菌床化:放線菌などのバクテリアから糸状菌が発生するまで時間を置く(約1か月) 

⑦作土層にすきこみ(15~20センチ)

⑧ソルゴーの作付け(3~4mまで育てる)

⑨すきこみ及び発酵処理 

⑩太陽熱発酵処理 

⑪作物の作付

 

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目指したのは「畑まるごと菌床化」
仮説のポイント
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一般に言われている、「畑まるごと堆肥化」が、有機物を投入し、土壌表面の付近での耕起によるエアレーションにより、主には、バクテリア分解をしていくのに対し、「畑まるごと菌床化」は高炭素のものを投入して、土壌表面に集積させ1か月ほどの期間発酵処理をとることで、畑の表面10㎝をきのこの培地のように糸状菌を発生させ、たとえて言うならキノコの菌床のような状態をつくる。その状態になると、森の落ち葉の下にいるような、食菌性のダニやトビムシなどが爆発的に繁殖し、まるで森のような生態系になる。トビムシは、大地のプランクトンと言われていて、トビムシがダニや小動物などの餌になり、ほかの小動物、微生物などを増やしてくれる起爆剤になってくれると期待。その状態にしてから、漉き込みをかけ、土壌生態系を構成する生物の量と質を上げることで、その後の作物生産に有利にはたらくのではないか?という仮説にもとづく、土づくりと育土。

バクテリアにとどまらず、そのキノコ菌なども発生させることで、より土壌を構成する微生物・小動物の量がふえるので、多様な分解経路、循環経路が形成され、作物の味や生育もよくなっちゃうのでは?という考えのもとにやってみてます。あくまで実験です。

※菌糸を食べるトビムシ(中村好男氏撮影)

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【0】土壌診断前の事前ヒアリング
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地主さんや地域の農家さんにこの地域や圃場で何が作られてきたのか、土壌改良の歴史などをききました。耕作放棄されるまでの使用履歴なども詳しく聞いていきます。また、その畑ごとの特徴なども合わせて聞いていきます

今回の畑は、おおきく二つの区画に分けられ8反と2反

8反は、耕作放棄される5年ほど前までは果樹だった。5年前に農業ができなくなったので、放置。20年まえくらいからは果樹をうえた。別の仕事がメインだったため、ほとんど、育たないような剪定や管理を繰り返し、とりあえず、作っていたという状態の土。粘土質で典型的な酸性土壌にみえる

別区画の2反は、やはり5年前から放置。それまでは、畜産農家が飼料作物のトウモロコシなどを作っていた。当時の牧草が野生化したものが生い茂っていた。ライグラスの種類だろう。牧草の生育は比較的よく、土が比較的超えているのではないかと予想できる。過剰になっているかが心配だ。一部ではあるが、植生がものすごく少ない場所がある。牛糞の置き場になっていたのではないかと予想。

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①土壌診断
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(1)全体を見回す

現在の雑草などの植生を見ながら、圃場のムラなどを見ていきます。

8反は、ほとんど、カヤやくずが中心。かやがはびこっている2反ほどの区画の土をほってみると、有機物がすくなく痩せている土。一方、同じ圃場でもカヤが生えているほうは、ここ5年ほどの蓄積のためか、かなり有機物リッチな土壌になっている

(2)土壌を掘る

表面の土は、手に取ってにおいをかいだり、握って、こよりにしてみたりして、粘土の割合などを確認していきます。

そのうえで、各圃場、5か所ほど、70㎝くらいほって下層土の状態を確認していきます

(3)化学性診断

今回は、植生のむらが多く、圃場も大きいので、いったん、緑肥を育てるまでやってみて、緑肥の生育むらを確認してから、場所を特定して化学性の診断をしていく予定。本当は、ある程度のめどをつけるために、初期に診断したかったが、開墾にかかりきりになり採土の時期が遅れたのと、コストを減らしたかったこともあり、初期の診断はしなかった。

このような状態のカヤをハンマーナイフで細かくクラッシュ

ハンマーナイフをかけた後に、いったん全面を耕起。本当は、さらにチップとサンシン堆肥を混ぜて、表層で発酵処理に移りたかったが、あまりにもでこぼこしているので、いったん整地を兼ねて耕起。

細かい剪定枝のチップを6~10t施用(土の有機物量をみて微調整した)

くずが生い茂っていた部分の土は非常にやせている模様。

 

サンシンの原材料(以下、サンシン堆肥)

コーヒーかす・お茶殻、大豆かす、桑の葉、昆布などが主原料。初期の発酵が始まっており、

主に放線菌だらけの状態になっている。初期発酵の材料を混合したものだと、4tダンプで運送費込み4000円と非常に安価なのもあり使っています。コスパが非常に良い

炭素投入量の2分の1前後を投入。イメージは、きのこの菌床をつくるイメージ。また、放置されていた期間が長く、やせている部分も多々あるので、今回は、チップ、サンシン堆肥共に多めの施用。

チップ(6~10t/10a) サンシン堆肥(4~6t/10a)

を散布して、表層10㎝に耕起

1週間ほどたつと、土壌表面が放線菌で真っ白になっている

時間の経過とともに、放線菌の爆発的な繁殖が収まり、今度は糸状菌に代わっていく

        

   

チップと堆肥を表層漉き込み後、1か月、放置した状態。

畜産農家がつかっていた畑。土をほってにおいをかぐと、放線菌のにおいから、きのこ菌のにおいに変わっていた

菌床状態。トビムシやササラダニなどがたくさん増えていました。うじゃうじゃです。

この畑、なぜか、ウリ科のきゅうりのようなものがたくさん生えていた。

 

 

かやの畑も一か月たったら、この通り、全体が菌床のようになっている。放線菌が繁殖しているときは、熱が少し上がっていて、生物が少なかった。放線菌がおさまると糸状菌が繁殖してくるのと、トビムシなどの小動物が増えてくるように見受けられた。

粘土質の土でべたべた感があった土が現在では、物理性が非常に良くなっている

 


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