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栽培技術ー大根の栽培方法

弥生時代には伝えられていたという大根。古くから様々な地方に伝播し、土着して地方ごと様々な品種を生み出してきました。

また、品種の多様性、生産量、消費量ともに、世界ナンバーワン。その数字からも日本で如何に、に大根が親しまれてきたかが伺われます。

その地域や気候にあった品種を選べば比較的、容易に栽培できる野菜の一つです。

もちろん、オーガニックに向いています。

以下に、大根の特徴と連作を可能にする栽培の事例などを紹介してみます。

【※注】 ここで取り上げている播種時期などは、中間地の作型を基本にしています。

 

【1】大根の特徴

 

■原産地 

地中海沿岸~中央アジア

■来歴 

中国から伝来したと伝えられています。栽培の歴史は長く、日本書紀(720年)にも記載があります。

 

■品種

様々な品種が全国的に作られています。用途によって、生食、漬物用、おろし、切干し、煮物など様々あります。

最近は、青首の耐病総太りなどが有名ですが、地方の名前がついた品種、宮重、練馬、三浦、桜島、聖護院、守口など地方の伝統食と非常に関連が深いです。

 

■作型 

 春作 秋冬作

 

■生理的な特徴など

○生育適温 17~21℃

○生育最低温度 4℃

○生育最高温度 32℃

○マイナス5℃以下で凍害の心配がでてくる

○開花(着花)の習性

種子が催芽した時から低温に感応する。15℃以下の低温に置かれると花芽分化し、その後、高温、長日の条件で花芽の発育・抽苔が促進。

 

【栽培の前提

土壌の基本の物理性・化学性・生物性を整えておきましょう。

特に、物理性・化学性は重要です。

栽培の前提として育土の項目で述べたように作物栽培が容易になる土壌構造を発達させておきます。

基本は、緑肥を利用していくので、大量の有機物や根による根耕による物理性の改善。

有機物の鋤き込みによる生物性の改善、そして、緑肥の効果としての保肥力がアップするなどの化学性にもアプローチしていけます。

 

【2】栽培事例

 

①緑肥をつかった栽培の事例

緑肥を使った大根と緑肥のローテーションによる連作体系を組みます。大根は、大規模で栽培する農家さんが多いので、基本的に機械で管理できるやり方をお勧めします。

緑肥を使う一番の理由は、緑肥をつくり、微生物や小動物に食べ物を供給することで起こる養分の循環。それを利用して作物を育てます。

また、もう一つの大きな理由として、大根で問題となる、キタネグサレセンチュウの食害などもえん麦(ヘイオーツなど)を組み合わせることにより防げるので、緑肥を入れる作型を組み合わせていくことで省力できれいな大根の栽培が可能になると思われます。

基本は超たんじゅん。ダイコンの作付前・作付後に緑肥を入れるのみです。

秋冬策なら秋冬まき・春まき緑肥なら、えん麦 ライムギ 

夏播き緑肥なら ギニアグラス スーダングラス マリーゴールド

を使っていきます。

夏緑肥をいれる代わりにトウモロコシの作型が重ねることもできるので、それを使っていってもいいと思います。

 

【使用緑肥】 

 

○秋冬まき・春まき緑肥 えん麦 ライムギ 

○夏播き緑肥 ギニアグラス スーダングラス マリーゴールド

 

【おすすめ品種】 

えん麦(ヘイオーツ・ニューオーツ etc)

ライムギ(R-007  etc)

ギニアグラス(ソイルクリーン  etc) 

スーダングラス(ねまへらそう   etc)

マリーゴールド(アフリカントール  etc)        

 

■緑肥栽培のコツ

やせ地からのスタートなら堆肥などで緑肥がしっかり育つようにする。必要に応じて、たい肥などを施用していきましょう。

緑肥がしっかり生育できることが最低限の条件。

ヘイオーツは、キタネグサレセンチュウを減らしてくれるので、ダイコンの秀品率があがる。ここに挙げた緑肥は基本、ダイコンに向いたものを上げてます。また、黒マルチとの併用で、キスジノミハムシの害を減らすことができます。

 

■連作と自家採種

<大根(秋・冬作)連作と自家採種の実践例>

9月初旬~中旬播種、11月下旬までに終了する作型は、ニンジンと同じくヘイオーツを使います。12月すぎの大根収穫後は、ライムギを使いました。最近だと、キタネグサレセンチュウの害をふせぐライムギのR-007がでているので有効な品種などを選択して使うのもいいのではないかと思います。

年々、病害虫の発生が減っていきました。台風などの被害にあっても、連作圃場は回復が早く、弱った状態でも、病気にやられることなく健全に育つケースがほとんどでした。

連作5年目には、マルチなしにも関わらず、播種後の草取りもいらない状態になりました。大根を播種後、間引きに入るだけで、後は収穫まで何もせずに行ける。

超省力化で簡単にできるようになりました。

ちなみに、ここでは、自家採種も行いました。対象区として、一般品種の区も作りましたが自家採種のものの生育がよくなるのは、もちろん、ダイコンであれば、どの品種も秀品率があがる状態になっていました。

 

■秋・冬作

【事前の準備】

やせている圃場は、緑肥の前に良質な堆肥などを施用して、緑肥の生育確保をします。

○春まきなら、エンバク(ヘイオーツ)がお薦め。出穂期~乳熟期になったら、モアがけ後、耕起。

○5月過ぎての播種であれば、ソルゴー・ギニアグラス・スーダングラスなどを使います。

○耕起の工夫

・1回目の耕起:深度は浅く10cm未満。

 表層に緑肥の残渣を集積させることにより好気性の微生物による分解を促進。

 いきなり深いところに混ぜるのではなく、残渣を集積させるのは、緑肥を集積させることにより、それを餌にして微生物を増やしたいので。

・2回目の耕起:10日~2週間して、今度は、作土層全体15cm

浅いところに集積させておいた緑肥を今度は、作土層全体に広げます。

はじめのすきこみ後、夏場で最低4週間はあけてから、大根の播種に入ります。

○太陽熱処理

緑肥鋤き込み後、必要に応じて太陽熱処理をかけると除草の手間を省けます。また緑肥の分解促進にも使えます。土壌病害の予防や団粒化促進の目的で使用してもいいでしょう。

 

【播種】 

大根の莢をみると3~5粒の種が入っています。

本来は、多粒播きして、間引いたほうが生育は良くなります。

自家採種の場合は3~5粒  購入種の場合は2~3粒 で播種するのをお勧めします。

9月初旬~10月下旬 緑肥鋤き込み後、最低4週間は開けて播種します。

(8月に播種する作型もありますが、虫害が多い時期なのでここでは紹介しません)

この作型で連作をかけて続けていくと、確実に大根を育てるための生態系が出来上がり

緑肥のみで大根が病気無く育つ仕組みが整っていきます。

 

【緑肥】

①大根の年内収穫の場合

12月前までに終わる作型なら、えん麦(ヘイオーツ)

12月に入ったらライムギを利用します。(R007)

②大根の年明け収穫の場合 

・3月~ならえん麦(ヘイオーツ)

・5月以降なら ソルゴー・ギニアグラス・スーダングラス

・作物利用なら、スイートコーン

 

■春作:(基本の部分は秋・冬作と同じ)

 

春作は時期によって主に3つの作型があります。

①トンネル+マルチ 春どり栽培(1月~3月下旬播種)

②春まき栽培 (3月中旬~4月下旬播種)

③夏まき栽培 (4月下旬~5月下旬)

 

【事前準備と播種】

秋・冬作と同じく、事前・事後に緑肥を挟むといいでしょう。

①と②の春の早い作型の場合は、前年にえん麦を鋤き込んでおいて土づくりを行い播種。

②~③の夏まきの作型ならば、11月播種したえん麦を3月~4月初旬に鋤き込み、養生期間をとってから播種。

 

【播種~収穫】

まだ、土壌の状態が整っていない場合、夏に近づく虫害の多い時期であれば、播種後、サンサンネットなどの被覆資材を初期使用すると虫害の防除ができます。

 

 

【収穫後の緑肥】

大根を夏に収穫するので、基本的にあとの作物は、緑肥。

ソルゴー、ギニアグラス、スーダングラス

 

■作付ローテーション 例①

①大根(9月初旬~中旬播種 ⇒11月初旬~中旬収穫)

 ↓

②えん麦orライムギ(11月初旬~12月初旬播種 ⇒3月下旬~4月初旬鋤き込み)

 ↓ 

③夏まき栽培 大根播種(4月下旬~5月下旬播種 ⇒6月下旬~7月下旬収穫)

↓ 

④ ソルゴー、ギニアグラス、スーダングラス播種

(6月下旬~7月下旬播種 ⇒ 8月下旬~9月中下旬鋤き込み)

※太陽熱マルチの組み合わせもあり!!

⑤大根播種 (9月下旬から10月下旬 ⇒ 年明け収穫)

⑥えん麦播種(3月~)

 

■作付ローテーション 例②

①大根(9月初旬~中旬播種 ⇒11月初旬~中旬収穫)

 ↓

②えん麦orライムギ(11月初旬~12月初旬播種 ⇒3月中旬~4月初旬鋤き込み)

 ↓ 

③スイートコーン播種(4月中旬~5月初旬播種 ⇒7月中旬~8月初旬収穫)

 ↓

④大根播種 (9月初旬~中旬播種 ⇒11月初旬~中旬収穫)

 ↓

⑤えん麦播種 

 

【注】 

特に初期、土壌の養分循環が十分でない時は、緑肥の生育状態や次に育てる作物に合わせて、適宜、炭素資材を追加したり、ぼかしや堆肥などを追加して微調整をしていくと、作物が育たないということがなくなります。

個人的な見解としては、プロの農家はあくまでも健全な作物の栽培と健全な経営の両方がなる立つことが大切だと思います。そこのバランスをとることをお勧めします。緑肥を使うこと、炭素資材をつかうことなど、土壌微生物による養分循環をおこすためのす手段です。手段が目的にならないように気をつけてください。


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