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微生物をいかした育土②

微生物を生かした育土②

 

□ 炭素資材を使った育土のコツ

 

 

「火のつけ方と同じ!!」

 

薪を使って火をつけることを想像してください。

みなさんも、キャンプなどの体験があると思いますが、

いきなり、マッチをすって、大きな薪に火をつけようとしても燃えうつらないですよね?

それよりも、燃えやすい新聞紙から始まって、小枝、少し大きな枝、薪と段階を踏んだほうが、スムーズに火は大きくなります。

土壌の微生物を活性化させるのも同じことが言えます。

大きな薪にあたるのは、高炭素でしかも大きくて荒いチップなど。

それをいきなり土に混ぜても、微生物さんが食べることできない、薪でいうところの火が付かない状態。

土の状態にもよりますが、そのような高炭素の資材でも、1年から2年くらいの期間を置けば、糸状菌などが周りにとりつき、養分を生み出していく状態になりますが、その状態になるまでは、おそらく、土の中に入れるとチッソ飢餓のような状態を起こします。そこで育てれば、作物は育たないか、小さいままで終わります。その期間は、作物ができなくなってしまう。農業者としては、これでは生きていけない。

ましてや、土壌消毒などで微生物の数が減少している畑を受け継いだ場合には、火にあたる微生物がいないので、なおさら時間がかかる。

農家としては、できる限りショートカットで作物ができるように土壌生態系の状態を整えたい。

そこで、まず、紙に火をつけるように、燃えやすいというか、微生物が食べやすい状態の炭素資材。つまり細かく粉砕されたチップ、葉っぱ主体の炭素率の比較的高すぎない細かいチップ、CN比40以上の緑肥など。竹を細かく粉砕したものなどを利用して、微生物の循環を生み出すように設定します。

このとき、必要なら、初期には、微生物が利用できる餌(チッソ源)としての米ぬかやぼかしなどを少量用いていきます。

また、耕作放棄地や山を切り開いて造成した土には、微生物の数がすくないので、必要なら牛糞たい肥や馬糞などを少量施用して、元の微生物の数を増やしておきます。

それと、火をつけるときにもそうですが、空気が必要ですよね。ちゃんと空気が入ってくるようにかまどを作ったり、薪を配置していかないと、たとえ火が付いたとしても消えてしまう。

微生物君もそうです。炭素を分解するために必要な菌は、基本的に空気が好きな子が多いので、物理性の悪い畑では、必要に応じて、サブソイラーを入れる、暗渠や明渠を掘る、溝を切るなどの下準備は必要です。

とにかく、まずは、数を増やします。

炭素を分解する糸状菌にはじまり、ありとあらゆる発酵菌・腐敗菌・古細菌・・・・など、とにかく菌の数をまず増やします。

一旦、火が付き始めて来たら、今度は大きな薪に火をうつしていくと、火が長持ちしますよね。それと同じように、

一定の微生物が繁殖していいる環境が整ってくると、高炭素の資材をいれても、それにとりつくスピードがましているので、比較的スムーズに炭素資材を養分化することができるようになってくる。

大体、3年くらい炭素資材を投入していくと、あとは、作物を継続的に作っていくだけで、ほぼ無投入や少量の投入で作物ができてくる畑に変わってきます。

ここまで来たら、常に作物を作り続けながら、様子を見ながら炭素資材を投入するかしないかを判断していく段階になります。

何を植えてもできてしまう状態になっています。

作物を作ることは、一見収奪のように見えますが、実は、作物も土の生き物たちに様々なものを供給しています。

植物は、光合成により作った10~30%くらいのエネルギーを、根を通して土壌生態系に供給しています。根からアミノ酸などの形で放出して、ミネラルを溶かしだして、それを吸収したり、そのアミノ酸が微生物の餌になり増殖がはじまったり、または、根自体が微生物や小動物の餌にもなります。根からは、古くなって剥離した組織などは、微生物君たちの格好の餌になります。

「一方的に奪うのではなく、与えながら与えられてより豊かな生態系をつくりだしています」

 

■具体的な育土の手順 

 

前提:物理性が良いところは、生物性もよいケースが多い。

よって、物理性の良しあし、化学性の良しあしでのパターン分けを考えてみたい。

ケースを想定して、それにたいするアプローチのしかたの仮説をのせてみました。

あくまでも仮説なので、ご自身で検討して実践してみてください。

 

【ケース① 物理性もよく・化学性も整っている場合】

地域の篤農家といわれている方の畑を高齢になったため規模を縮小するということで、貸してもらった。基本慣行でトウモロコシや葉物を作り続けてきた畑で、土壌診断をしてみたら、化学性に問題はない。物理性も地域で作っている家畜ふんの「完熟たい肥利用によるトウモロコシなどを作り続けてきたせいか、団粒化がすすんでおり、水はけ、水持ちともに良い感じ。

 

【仮説パターン1】

作付例

【トウモロコシ →キャベツ・ブロッコリー・白菜など】のローテーション を行い作物をつくりながら育土

今までの作物を引き継ぎながら、春先トウモロコシ、秋作にキャベツなどの作型を行う。

もともと、トウモロコシや葉物でつかっていたということなので、その作物に適した土壌生態系ができている可能性が高い。同じくそれを作ってみると省力化でいい。

近場でなんらかの炭素資材が入る場合は、トウモロコシ収穫後に炭素資材を追加して、初期は、炭素の量に応じて少量の微生物の餌としてのぼかしなどのチッソ源も施用しながら育土。キャベツの収穫後、収穫残さに追加して、炭素資材まいて、すきこみ。

また、トウモロコシの作型につなげていく。

ちなみに、トウモロコシ自体が炭素資材として機能するので、畑で炭素を作りながら、少量の炭素資材を追加して作っていくやり方になっている。

<補完技術>

トウモロコシ収穫後、炭素資材とチッソ減を撒いて耕起。その後、キャベツ作付前に太陽熱処理をかけて、炭素資材の有効化を図る。

 

【仮説パターン2】

イネ科の緑肥利用及び、表面施用による炭素資材の利用による育土をしながら、つくれるものを作っていく。今回は別の作物を想定

※イネ科緑肥はソルゴーやライムギ・エンバクなどを使う。

作付例

秋・冬のニンジン→ソルゴーもしくは、ライムギのローテーション

ニンジン収穫後、えん麦もしくは、ライムギを播種。乳熟期くらいまで育てて、すき込む。

一度目の耕起は、10センチ以下の浅い位置にすき込む。好気性の微生物による分解を促進、2回目の耕起で作土層全体にすき込む。

しばらく置いてから、にんじん播種前2~4週間前くらいから、太陽熱処理をかける。

播種の2~3日前にマルチをとり、播種をする。

 

 

【ケース2:物理性悪く・化学性も悪い場合】

 

【仮説パターン1】

重粘土でガチガチの畑。雨がふるとぐちゃぐちゃ、乾くとカチカチになるような畑。

はじめに、土壌調査をする

    ↓

①トラクターによる全面耕起

化学性調査のためのサンプリングを行う

    ↓    ↓

②トレンチャーによる溝掘り(15センチ幅 深さ80㎝~100㎝くらいの溝を1.5メートルから2メートルくらいおきに切る)

    ↓

③剪定枝チップを穴につめる 

    ↓

④トラクターで表層をならすように耕起

⑤化学性の補正 資材の投入と耕起(約1週間おく)

    ↓

⑥全面に以下のものをまく

 ・堆肥(牛糞・馬糞・鶏糞などの完熟のものがよい。あれば馬糞がお勧め)

 ・剪定枝チップ

 ・EMボカシ100㎏~200㎏(土の状態が良くない場合)

    ↓

⑦トラクターにより表層耕起 7~10センチ 浅くすき込む

 目的:表層に混ぜることで、好気性菌による発酵を促進 糸状菌を発生させたい

    ↓

⑧養生期間をおく(1ヶ月くらい)

    ↓

⑨2回目の耕起 作土層全体にすきこむ(15cmくらい)

    ↓

⑩ソルゴー播種(品種:スーパーシュガーソルゴー 6~7㎏/10a) 5月~8月初旬

 サトウキビのように糖度が上がるソルゴーを使う。3メートルまで育て、乳熟期~完熟期の間ですきこみをする。(生育が初期悪いようなら、軽く、土ボカシなどを追肥)

    ↓

⑪モアがけ ソルガムを細かく砕く。

 手押しのハンマーナイフもしくは、フレールモア(トラクターにつけるタイプのもの)で細かくする。その後に、剪定枝チップを全面に少量まく。土の状態と残渣の状態を確認し、必要に応じ、EMボカシなどを50~100㎏/10a追加。

    ↓

⑫トラクターで表層耕起(10cm以下)

 目的は、土壌表面で好気的な環境で発酵させるため

    ↓

⑬2週間後にトラクター耕起

 目的:作土層15cmに微生物層をひろげるようにするため

    ↓

⑭太陽熱発酵処理

 透明ビニールマルチ(2.3メートル)をすき間なく、マルチして太陽熱処理を行う。

 2~4週間太陽熱処理をおこなってから剥ぐ。

 目的:未利用の炭素資材の有効化。微生物の活性化。表面の除草をねらう。

    ↓

⑮作付開始

※溝の深さや数は、その畑の状態や土の状態によって変動させる

 

【ケース3 物理性が良く 化学性整ってない場合】

かつて畑として使われていた。5年以上放置されていて、ススキやカヤなどの大型の草が生えている。 低木も少し見かける。水はけは良いが。化学性は診断の結果。塩基欠乏による酸性化が進んでいる。

【仮説パターン1】

化学性を整えてから、緑肥と炭素資材を使った育土を進めながら、作物を栽培。養分供給量が必要な作物(果菜類)などを栽培する際は、幅1.5m~2.0m間隔くらい(育てる作物に合わせて、溝を設定してもよい)でトレンチャーで(50㎝~100㎝)溝を掘り、チップなどの炭素資材を充填して、栽培してもいいのではないか。

【仮説パターン2】

化学性は整えず、基本は、緑肥と炭素資材の組み合わせで育土。

養分必要量の多い作物の場合、作業の労力がかけられるようであれば、幅1.5m~2.0m間隔くらい(育てる作物に合わせて、溝を設定してもよい)でトレンチャーで(50㎝~100㎝)溝を掘り、チップなどの炭素資材を充填。できれば、夏場にでも太陽熱処理などをかけられると入れた炭素資材の有効化が進む可能性あり。

※あまりにも化学性の悪い場合は、微生物による炭素資材の養分化が一定量、進まないと作物の出来が不出来になる可能性が想定される。化学性を整えてしまおうという理由は、農家としてなるだけ最速で作物をとれるようにしたいからというもの。

 

<ケース4 物理性が悪く 化学性整っている場合>

慣行栽培で長年使われてきた。特に緑肥やたい肥の投入もあまり行っていなかったため、土が単粒化し、水はけが悪くなっている。長年、クロールピクリンをつかってきたので、微生物の数はすくない。黒ボク土を想定

【仮説パターン1】 黒ボク土の場合

基本は、緑肥と炭素資材の組み合わせで育土。

サブソイラーなどがあれば、かけてから緑肥を育てる。緑肥を育てる前に、馬糞や牛糞などの良質なたい肥をまいて、微生物の数を増やしたい。

養分必要量の多い作物の場合、作業の労力がかけられるようであれば、溝堀とチップ充填もやると尚よいのではないか。できれば、夏場にでも太陽熱処理などをかけられると入れた炭素資材の有効化が進む可能性あり。

【仮説パターン2】 もし、黒ボクではなく、重粘土の場合

もし、土質が粘土質で雨の日ぐちゃぐちゃ、晴れの日カチカチになるような土であれば。

基本は、緑肥と炭素資材の組み合わせで育土。

幅1.5m~2.0m間隔くらい(育てる作物に合わせて、溝を設定してもよい)でトレンチャーで(50㎝~100㎝)溝を掘り、チップを充填。まずは、水はけをはじめとする物理性をよくするように環境整備。

溝にチップなどの炭素資材を充填したことにより、急速に団粒化が進み、一年で水はけのよい土に生まれ変わる可能性あり。表面にもチップを入れるなどする。緑肥も組み合わせるとなおいい。作付のタイミングが許せば、夏場に太陽熱処理をすると、さらに団粒化が進む可能性あり。